隣人トラブルにお悩みの方は調停を行う方も多くいます。
調停という法的な手段を用いることで、個人間の話し合いより解決する可能性をグっと高めることができるからです。
今回は調停の始め方や大きな流れ、メリット・デメリットなどを詳しくご説明します。
目次
そもそも調停とは?
調停とは裁判所で実施するトラブル解決の話し合いのことを意味します。
当人同士の話し合いと裁判の中間のようなイメージを持ってもらえば大丈夫です。
調停はあくまで話し合いですから、裁判のように判決を伴うものではありませんし、
話がまとまらなければ調停不成立として、申し立てた側が調停を取り下げることもできます。
隣人トラブルを調停で解決するメリット・デメリット
調停のメリットは大きく3つあります。
- トラブル解決の可能性が高まる
- 裁判ほどハードルが高くなく気軽にできる
- 裁判に比べ安く行える
隣人トラブル解決の可能性が高まる
隣人トラブルが起きた場合、当人同士が話あってもトラブルがさらに拗れる場合がほとんどです。
しかし裁判所に出向き調停をすることで、トラブルを解決できる可能性が大きく高まります。
なぜなら調停を行えば、法的に公式な場で話し合いができますし、進行や日取りもしっかり決まっているのでうやむやになる心配もありません。
また調停委員という人が中間に立って話を進めてくれるので、スムーズでストレスのない話し合いができます。
裁判ほどハードルが高くなく気軽にできる
隣人トラブル解決で裁判を起こすと、非常に長い時間が必要になりますし手続きも煩雑です。
一方調停の場合は申立書一枚書くだけであとは待っているだけで進行します。
また話し合いの場も裁判ほど厳しくなく、かといって公式の場ですから丁度いい温度感で話し合いができます。
経済的に安く行える
隣人トラブルの裁判は少なく見積もっても100万円はかかりますし、弁護士費用なども考えると500~1,000万円かかることもザラにあります
一方で隣人トラブルの調停の場合は初期費用が2万円程度、以降は1回ごとに5千円程度と非常に安価で行うことができます。
よく離婚などのトラブルでも調停が用いられるのは、裁判と比べて金額負担が小さいからという理由もあります。
メリットも大きい調停ですがデメリットもあります。
- 調停が開かれるのは平日のため調整が難しい
- 必ずしも結果を得られるとは限らない
調停が開かれるのは平日のため調整が難しい
調停は平日に行われることが一般的です。
さらに一回の調停は約2時間かかることからスケジュール調整に一定のハードルがあります。
結果を得られる保証がない
訴訟の場合は判決による結果が得られますが、調停では話がまとまらなかった場合に結果が得られないことがあります。
なぜなら話し合いが不利になると合意しないことで、調停を不成立にすることもできます。
時間をかけて調停を実施しても結果につながらない可能性があることは留意しておきましょう。
隣人トラブルにおける調停の具体的な流れ
隣人トラブルにおける調停は、以下のような流れで進むのが一般的です。
- 調停の申立書の記入・提出
- 裁判所からの呼び出し
- 裁判所で初回の調停、具体的な流れの説明
- 裁判所で2回目以降の調停(複数回)
- 調停の成立/不成立
調停の申立書の記入・提出
調停は申立書の提出をきっかけに始まります。
申立書は各地にある家庭裁判所で書類が入手できます。
また最近は裁判所のHPでも定型の書類(word/PDF)がダウンロードできます。
書き方は全てフォーマット化されているので、案内の通りに内容を書き進めていけば大丈夫です。ただ心配な方はHPではなく家庭裁判所に出向くことをオススメします。なぜなら専門の係員さんがいるので、記入に困ったときはすぐに質問できるからです。
記入が完了したら家庭裁判所に提出を行います。
裁判所はどこでもいいという訳ではなく、「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」と定められています。
しかし隣人トラブルの場合は、基本的に同じ集合住宅や近隣の家のため、必然的に自宅から近くの家庭裁判所となります。
裁判所からの呼び出し
申立書の提出が済めば、あとは待っているだけでOKです。
受付が済むと数日~数週間で裁判所から呼出状が届きます。
この呼出状には初回調停日時、場所、補足事項が記載されています。
日時は相手方と事前に調整したスケジュールが、場所は裁判所の住所、および具体的な実施部屋(○○号室)が記載されています。
東京にある家庭裁判所はビルの中にあることが多いですが、地方に行くと独立家屋であることもあります。
場所はわかりやすく記載されているので迷う心配はないかと思いますが、部屋が分からないなどあれば、裁判所の守衛さんに聞けば大丈夫です。
裁判所で初回の調停、具体的な流れの説明
所定の部屋に付いたら調停が始まります。
調停室はさほど大きくはなく、中央にテーブルがあります。
一般的には隣人とあなたが同じ側に座り、対面する形で2人の調停委員、1人の裁判官が座ります。
(裁判官は最初と最後の調停結果のまとめのみの参加で、途中経過は関わらないことが一般的です)
このような環境で隣人と調停委員と話し合いを進めていくわけですが、もし隣人との関係が険悪である場合は個々で調停室に呼び出されるということもあります。
調停が始まりますと、まず調停委員から担当の自己紹介や今後の流れの説明があります。
説明が終了したら、いよいよ申立人であるあなたから話をすることになります。
どのような内容の調停を申し立てたか、また経緯や状況を簡潔に話すとよいでしょう。
あなたの話が終わると、今度は調停委員が相手方である隣人に、内容の相違や補足がないか話を聞きます。
ここで、隣人からすると利害が異なるわけですから、あなたの考えや主張と真逆のことを言うかもしれませんが、ここは堪えましょう。
感情的になって反論してはあなたが損です。
公式の場ですから冷静にというのもありますし、調停委員からの印象を悪くしては話が進みにくくなったり、意図しない調停結果になることもあります。
初回の調停は調停委員との顔合わせや、概要の把握で終わるため簡潔に終わることが多いかと思います。
話し合いが終われば次回の日程を調整して一旦終了です。
退出時はもちろん隣人とは別々のタイミングで退出となるのでご安心ください。
裁判所で2回目以降の調停(複数回)
2回目以降も場所や環境は初回と大きく変わりません。
しかしここから内容がより深い話になってきます。
またお互いの主張がしやすいように、申立人であるあなたの話の最中は相手方である隣人が退席し、隣人が主張をする際はあなたが退席する、というような交互に話をすることになります。
調停の席では主張だけではなく、証拠となる書類や物証を提出することもできます。
書類を提出する場合は、自分用、相手方のもの、調停委員2名のものと4部印刷するといいでしょう。
このような書類は全て調停委員が記録として残してくれるのでご安心ください。
以降はこのような形で主張や新たな証拠を提出して、調停を進めていきます。
お互いの話を調停委員がヒアリングし、法的に正しいとされるのはどちらかといった裁判所の意見を述べる形で少しずつ話をまとめていきます。
こうして話し合いを重ねて妥協点が見つかれば、調停委員が書面にまとめて裁判官に提出します。
調停の成立/不成立
調停が成立すれば裁判官と書記官がやってきて、妥協案について法的な観点から訂正や意見を加えて最終的なまとめをしてくれます。
こうして妥協案が成立し調停は終了となります。
妥協点は口頭のみではなく、書記官が記録として残します。
この書類のことを調停調書と呼び法的な効力を持ちます。以降あなたと隣人はこの取り決めに従って行動することとなります。
もちろん妥協点がみつからず、調停が不成立となる場合もあります。
この場合は裁判官から「調停は不調となった旨」が伝えられ調停終了となります。
不調の場合も書記官は記録を残しますが、これは調停調書とはならずただの話し合いの記録として残るのみです。そのため法的な効力はもちません。
以上が調停の一連の流れです。
調停が不成立となった場合はどうすればいいのか?
せっかく調停を行ったのにも関わらず、隣人トラブルの解決に至らない場合もあります。
その場合は調停から訴訟という、より法的専門性の高いステップへと話を進めることになります。
調停は法的な見解も入りますが、あくまで軽度なものに過ぎません。
そのため訴訟を提起し本格的な裁判になることで、隣人トラブルが解決する可能性はあります。
もし訴訟へ移行する場合に、今まで行った調停を無駄にしない方法があります。
調停終了通知を受けた2週間以内に、調停の目的となった内容で訴訟を提起した場合は、調停を申し立てたときに、その訴訟があったものと見なされます。
そうすると調停内容の継続はもちろんのこと、訴訟の手数料から調停時の手数料が控除されたり、時効中断の効力を受けることができるなど、今までの調停が無駄になりません。
今回のまとめ
- 調停とは裁判所で実施するトラブル解決の話し合い
- 調停はメリットとデメリットがあり押さえておく必要がある
- 隣人トラブルの調停は申立書から始まり、家庭裁判所で実施される
- もし調停が不成立となった場合は訴訟へと移行する